「グラスホッパー」

結局、直木賞取れなかったし…。む。

グラスホッパー

グラスホッパー

ついに伊坂幸太郎の最新作に追いついてしまいました。もうこれで伊坂作品のストックはありません。
…2004年の秋以降立て続けに読んでいただけに、ちょっと寂しいです。まあ新作を待ちますが。
さて、気を取り直して感想を。
従来の伊坂作品の通り、相変わらず非常に読みやすい本作。「殺し屋小説」なんていう恐ろしげなジャンルの割には、何でこんなに軽く読めるのやら。
それは例によって魅力的な登場人物のせいなのでしょうか。
「殺し屋」といっても、一般的にイメージしがちなスナイパーなどではなく、登場するのは「自殺屋」に「押し屋」という一風変わったジャンルの人たち。もちろん普通の(?)ナイフで実行する殺し屋も視点のひとつを担っているのですが、そのキャラクターがまたちょっと憎めない感じだったり。
それ以上に、読者が最も感情移入をしてしまうだろう視点「鈴木」(非殺し屋)のキャラクターが緊張感に欠けるため、余計軽さを演出しているのですが。
ちなみにこのなかで個人的に妙に気になったのが「自殺屋」の鯨だったり。一緒にいるとなぜか自ら死を選びたくなるそうで。…確かにそういう人がいるといろいろいいかもしれませんね。
自殺願望は一切ありませんが、ただ吸い込まれるように恐れもなく死んでゆけるのであれば、それはそれで魅力的な死のような気がしてみたり。…まあ、気のせいなのでしょうけれど。
しかし今回もこの作者の巧さが出ています。本作はミステリーではないと思うのですが、伏線の張り方が巧く、例によってミステリー的要素が物語を見事に演出されています。
ただし、私が伊坂幸太郎氏の作品にここまで惹かれている要因のひとつが今回は欠けているので(ある意味ネタバレなのでここには書きません)、他作品に比べると、そんなに評価は高くないですが…。
でも、間違いなく面白い作品だと思います。これで直木賞取ってもあんまり嬉しくないけど(笑)。