「行きずりの街」

行きずりの街 (新潮文庫)

行きずりの街 (新潮文庫)

一昨年〜昨年あたりからでしょうか。やたらと煽り文句での帯を付けて本屋で平積みされているのを以前から気にしていたのですが、とあるきっかけがあったので本書を手にとってみました。
志水辰夫さんの作品そのものが、私にとっては初読。ミステリー作家というよりハードボイルド作家なんですね。確かにそういう硬派(?)な印象はありました。だって、主人公のストイックな感じとか、描かれる恋愛模様とか、なんかね。オトナな感じというか。

で、読んだ感想はというと、普通におもしろかったです。普通って何だよ…って感じですが、んー、それ以上ではなかったというか。
志水さんの文章は、割とおもしろい表現が随所に出てくるのですが、微妙に私にハマらなかったんですよね。他の人がなかなかしないような表現に、ハッとさせられるよりもむしろ、「ん? 微妙に何が言いたいのかよくわからない…」といちいち引っかかってしまったり。情緒的な表現はかなり魅力的な文章がいくつもあったのですが、情景描写の表現がどうもハマらず。

とはいえ、1991年のこのミス1位ながら、特に古さを感じさせることなく、最後までおもしろく読むことができたのは、プロットがしっかりしていて、なおかつハードボイルドな展開に私自身が魅せられていたからでしょう。
志水作品を今後読むかどうかは今のところまだわかりませんが、オトナのオトコの世界を覗きたくなったら、この人の作品か大沢在昌作品あたりを手に取りたいと思います(笑)。