「もう誘拐なんてしない」

もう誘拐なんてしない

もう誘拐なんてしない

どうやら古処氏と同様、文春から1月に発行されていたらしいのに、一切気付かず、先週末に出かけた本屋で平積みになっているのを発見して、ようやく買いました。
新書でも文庫でもないのにソフトカバーの新刊を手に取ったのは、おそらくお手頃価格(\1,200)だったことに加え、東川氏のお得意な軽〜いノリが全面に出ている感じがあったからだと思います。
ということで、気軽に読めることを知っているので、さくっと読み始めて、さくっと読了。相変わらず、軽いわ〜。ま、だから好きなんですけどね。
…にしても、今回はもしかしたら軽すぎ? という印象も少々あったりして。あまりに緊迫感のない展開のため、あんまり考えずに読んでいて、気付いたらあっという間に終盤…みたいな。それが楽といえば楽なのですが、ここまでするするっと来ちゃうのも、どうなんでしょうね。
かつ、ミステリー的には選択肢があまりに少ないために、真犯人とアリバイトリックの手法が何となく簡単に予想がついてしまうあたりが、少々残念。でもまあ、そんなことは些細だと思えるくらいに、「全体的に」「何となく」おもしろかったんですけど(笑)。
あまりに軽すぎるキャラクターに、今回もかなり笑わされました。地の文でさらっと笑わせるあたりのこの人のテクニックは、何だかんだいってツボみたいです。
加えて今回は、舞台が下関ということで、東川氏と同じく広島県出身の私にとっては、なんとも表現しづらい心のくすぐられ方をしたというか…。いや、そういう意味では今回はやっぱり贔屓目に見ちゃっているのかな。
結局は、私にとっては非常におもしろい作品ではありました。決して東川氏の過去作品を超えるものではないけれど、一定のレベル(笑いどころにしろミステリー要素にしろ)を保ちつつ、しっかり読者を楽しませてくれていると思います。
やっぱりこの人の作品は、重宝するなあ…。そろそろ未読の「館島」も読むかなあ…。