「モダンタイムス」感想続き

何だかんだと引き摺っている本作。これを読んだ後、↑とか他の作品も読んでいるんですけれど、もうちょっと語りたかったりして。てか今回のは感想とはまた違う気が。まだ書きたいことが残ってるなあ。

モダンタイムス (Morning NOVELS)

モダンタイムス (Morning NOVELS)

「逃げるが勝ち」
ゴールデンスランバー」を読んだ相方の発言が↑コレです。「モダンタイムス」も、結局はそういうストーリーで。キャラクターたちは戦っているけれど、結局は「巨大な権力(システム?)」には打ち克つことはできなくて。必死で戦いつつも生き延びるために逃げるその姿は、ある意味すごく人間的で愛すべき部分ではあるものの、でもかつての伊坂作品で味わえたような満ち足りたハッピー感は産んでくれません。

私が最初に触れた伊坂作品は、デビュー作でもある「オーデュボンの祈り」でした。私はこの作品がとても好きです。今でもきっと一番好きな伊坂作品なのではないかな。とても大切な作品です。
この作品の印象が強いのか、私の中で伊坂作品につきまとうイメージは「寓話」、おとぎ話です。リアルな世界に近いけれど、でもリアルな世界ではない。世知辛いリアルに近い世界の中で、ちょっととぼけた登場人物たちが、ちょっとズレた会話をしながら、微妙なバランスを取りつつ生活していく、そんな物語。おそらくこの「オーデュボンの祈り」の頃でしょうか? 週刊誌で読んだ伊坂幸太郎氏のインタビューの中で、確か「セックスとバイオレンスは描かない」(大意…か? 違うかも。少なくともそういうものばかりには絶対しないといったようなコンセプトかな)という発言をされていて、…私にはそれがフィットしていたように思います。
だけど今回の「モダンタイムス」は違うのです。絶妙なバランスは保たれているので愛せるけれど、でもバイオレンスがある。私はそれが好きではないのです。でもそれは単なる好みの問題なので、必要なその展開は仕方がないのでしょう。少なくとも今回は、例えば西尾を、例えば佳代子を、そして何よりこの「世界」を描くのに、バイオレンスの描写は必要不可欠なのかもしれません。…だけど、好きになれないんだよなあ。途中までは絶妙にかわしているし、最終的にもグロテスクな描写にはならないのだけれど、それでもやはり苦手。どうしてもダメなのです。そういうのがないホッとできる伊坂作品にどっぷり浸かって慣れていたからこそ、何だか違和感を感じてしまっているだけかもしれないのですが。

そんなストーリーが続く最近の伊坂作品。もしかしたら私が本当に望む、本当に好きな作品を、伊坂氏が書くことはこれから先ないのかもしれません。だけど、それでもいい。私が好きな伊坂幸太郎は、やはりその作品の中にはいます。彼の生むキャラクターが、彼の紡ぐ物語が、彼の醸す空気感が、そこには詰まっているから。
とりあえず、私はこれからも伊坂幸太郎作品を読み続けます。