「四季 秋」

四季 秋 (講談社ノベルス)

四季 秋 (講談社ノベルス)

これはミステリーでもなければ本格でもない作品です。
そして、S&MシリーズおよびVシリーズを全て読破した人のみにオススメできる作品です。それ以外の方には残念ながらオススメできなかったり。もともと本シリーズ自体、上記2シリーズを読んでいる人向けの作品だと思っていたのですが、今回はこれまでオブラートに包まれて描かれていたものが、これでもかというほどあからさまにネタバラシされているため、はっきり言って未読の方には何が何だかわからないんじゃないかと思います。
さて、真賀田四季という天才を描いた本シリーズですが、今回、肝心の本人は出てきません。久しぶりの萌絵視点やその他の視点を織り交ぜながら、それでもその中心にあるのは間違いなく真賀田四季。たった一人の天才に、その周囲にいる人たちが運命を握られているようにさえ見えてしまいます。
それを考えると、(以下反転)今回萌絵と初対面を果たした紅子は、シリーズ最強なのかもしれません。「四季から学ぶものは何もない」と言い切れる強さ。
そういえば今回は林さんまで出てきちゃいましたね。林さんが刑事を辞めた理由というのも気になるところです。(ただの退職?)
また、保呂草&亜樹良の大人カップルは何というか、うまいことまとまってしまったようで(?)。
S&MシリーズにしろVシリーズにしろ、どちらも本格ミステリーでありながら、非常にキャラクターの立った作品で、恋愛的な要素もサブ的(という割に目立ってましたが)ながらストーリーの進行に大きく絡んできていました。本作の場合、「ミステリー」という要素が非常に薄いため、余計にその恋愛的な要素が前面に出てきていたように思います。勿論それが悪いというわけではなく、非常に面白かったわけですが…。(ここまで)
どちらにしろ、森氏の思惑通り、こういう作品を読んで驚いたり頷いたり、そして喜んでいたりする自分がいるわけです。とりあえず言えるのは、「冬」がどういう作品になるのか、ものすごーーーく楽しみです。