「アヒルと鴨のコインロッカー」

せつな系、だけど最高のミステリー。

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

立て続けに伊坂幸太郎作品を読破しているこの秋。吉川英治文学賞受賞の本作についても、もちろんさくっと。
デビュー作から順番にずっと読んで来ているのですが、これだけアベレージが高く(というか一切ハズレがない)読者の期待をさらに高めるような作品をどんどん書き続けてくれる作家というのは本当に貴重だと思います。
すっかり伊坂ワールドにハマりまくり。もちろん本作についても夢中になって一気に読んでしまいました。
相変わらずの独特の世界なのですが、本作はその「巧みさ」が非常に強調されていたように思います。うまいなあ。すっかり唸らされてしまいました。
この作品の評価が世間的に非常に高いことには、まったくもって頷けます。だって見事なんだもの。
相変わらず読みやすい文体、魅力的なキャラクター、計算された構成。これまでの作品から脈々と流れる、このゆるぎない3本柱。(いや、この人の柱はもっとあると思いますが。)
…だけど今回は、これまでの伊坂作品になかった要素があるのです。それは、読後感に襲ってくるどうしようもないせつなさ。
いつも通り前向きだし爽やかさもあるラストなのだけれど、それだけではない…なんというかやるせない思いが残るのです。
それでも、私はこの作品が好きですし、何よりもその構成の見事さには圧巻でした。ミステリー界での評価が最も高いのは、確かにこの作品だろうなあ…と思います。
これまた文句なく、オススメ。