「ふたつの枷」

ふたつの枷

ふたつの枷

遅くなりましたが、読み終えました。…今回も静かで、そして胸にのしかかる物語。泣いたりはしない。だってそれは違うから。
描かれているのは、異国の地で戦う兵の姿。そこに生きる1人1人の人間の姿。彼らの戦う場所は、もちろん戦うためだけの場所ではない。そんな場所はどこにもない。そこに暮らす現地の人たちがいる。そうした人々の生活を妨げて、彼らが戦うのはそして米兵だけではない。痛ましいほどのリアル。間違いなくそこにあった現実。目をそらしてはいけないと強く思う。

本当は1作ずつ感想を書きたいけれど、ちょっといまは書けない。どれもすべてが、心に突き刺さるまぎれもない現実。1945年の夏に、彼ら歴史に名を残さない兵たちが、異国の地で迎えた終戦前後のとき。日本が敗戦を受け入れたその瞬間、彼らの戦いも終わるのか? …当たり前だが、そんなことはない。
彼らが戦っているのは米兵だけではない。彼らを苦しめる病。生きるために必要な水、食糧。
そしてまた彼らを縛るものは、日本という国だけではない。好むと好まざるとにかかわらず、異国の地で彼らを迎え入れた現地の人々。

4作をまとめた「ふたつの枷」というタイトルの持つ意味。正しく捉えられているかどうか自信はないけれど。そこに生きる彼らは、はめられた枷を、その後もつけたままで生きなくてはならない。あるいはその枷をはめたまま死んでゆく。
どの作品もものすごく心に刺さったけれど、あまりに衝撃的だったのは「帰着」。そのラストはとてもショッキングでした。
ああホント、ちゃんと書きたい。でもまだ言葉にできないのだ。

少なくとも、強く思うことはただひとつ。こんなことはもうあっちゃいけない。戦争なんてあってはいけない。人を人でなくす、それが戦争だと、何度も古処作品からは教えられた。今回もまた。