「ミノタウロス」

ミノタウロス (講談社文庫)

ミノタウロス (講談社文庫)

以前から読みたかった本作を読みました。Twitterではフォローしているし、日記も読んでいるのですが、実は著作を読んだのは初。きっかけもないし、私は作者の求める読者でないことは明白だったので。それでも、本作は前々から読みたくて、文庫化を機に、手に取りました。

最初の印象は、「意外と読みやすいな」ということ。日記などの文章からして、少々構えていたのですが、意外とシンプルで読みやすい。偏見だったとはいえ、ちょっと意外でした。ほかの作品だと違うのかしら。

シンプルといえど、筆力は圧倒的。そうか、会話文の「」が一切使われていないのか。私は得意ではない世界(何せ無知だから)、だけれど惹かれ、魅せられ、読み進めました。読むのに妙に時間がかかった気がするけれど、序盤、そして終盤、その世界に酔いしれました。うーん、大げさかな。

語り手であるヴァシリの生きた世界を、私はとてもいとしいと思えない。きっとヴァシリ自身もそうなのだろう。ラストの彼の独白は、そして壮絶なラストは、がつんと胸を殴られて、そして残りました。

人を人たらしめるものとは、何なのか。…逆かな、なぜ、人が人でなくなってしまうのか。そのきっかけが強制的にもたらされてしまったのか。それをいまここで、考えたりはしないけれど。

だけど、ふと考え始めるとまたぐるぐるする。いずれまた書きたくなりそうなテーマです。むむう。