「私の男」

私の男 (文春文庫)

私の男 (文春文庫)

とことん感想を書くのをサボっていました。GWはそれなりに読書に時間を費やしているので、徐々に書いていきます。まずは一番最近読んだこの本から。直木賞受賞作の文庫化ということで、待っていました。えーと、でも「赤朽葉家の伝説」の文庫化はまだですか…。

どうもこれまで私は、桜庭作品のもったいぶり方というか、掴みはめちゃくちゃバッチリなのに、どうも後半〜終盤にかけて失速していく感じとか、少々ラノベ的というか乙女ちっくというかそういう感じが少々不満で、イマイチ評価ができないと思っていました。でもひさびさに読んだ本作は、小説家として一気に成長した姿が見えたというか、本当にハッとするような作品でした。

何よりもまず、その文章力の高さ。テーマがテーマゆえに、粘つくような、匂い立つような、薄暗い表現。それがとても美しい。そしてその構成。徐々に時間を遡り描かれていく、「わたしと、私の男」の物語。彼らの関係性を、過去の出来事を、ただただ知りたくて見守りたくて、息を潜め、先へ先へと読み進めました。

好きな作品かと問われると、頷けないのは相変わらずなのですが、それでもとても優れた小説だと思います。不満を漏らしつつもどうしても惹かれるこの人の作品は、きっとこれからも読んでいくのだろうな。てか、ホント文庫化待ちなのですが↓。

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説