「愚行録」

愚行録 (創元推理文庫)

愚行録 (創元推理文庫)

ずいぶんひさしぶりに読んだ貫井作品。相変わらず好きなのです。どれだけ読後感が悪いことがわかっていようと。しかも本作は作者ご本人が「最悪に不快な読後感を残す話を構想しました」と断言しているわけですから。それはもう覚悟の上で読みました。

…意外にも、読み終えた後の感覚は、そんなに不快ではありません。確かに何ともいえない、イヤな気分は少々ありますが、それなら同じ貫井作品のアレとかアレの方が…(苦笑)。

ひさびさの貫井作品でしたが、巧いので一気に読んでしまいました。確かにわざとらしいというか薄っぺらく感じられる部分もありましたが、何ともいえないこの感じは、やはり巧いな〜と。まさに「愚行」録なのです。それは、語られる事件の被害者だけでなく、語る関係者の側も。

ねっとりとした、じわりじわりと迫ってくる嫌悪感というか何ともいえない不快感(あ、やっぱり「不快」なのか!)は、まあ作者の狙い通りの感想なのだろうな。でもそれ以上の感想はなく、個人的には貫井作品の中では評価はあまり高くありません。なんというか、中途半端な印象なのかも。