「凍りのくじら」

凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)

書店で文庫化されたものを発見して、即購入。別の本を読んでいたりして(これは別途長々感想を書きます)遅くなりましたが、昨日乗っていた電車の中で読了。
…正直、電車の中で読んでるのに、「それはどうよ?」っていうくらい、泣きまくり。いや、泣きたくなくて何度か本を閉じたんだけれど、それでも読むのをやめたくなくて、結局再度本を開いて、また涙をこぼしてしまう…。ああ、恥ずかしいヤツ。だけど、読みました。とても素敵な1冊でした。辻村作品は過去に読んだ2作ともにお気に入りですが、本作が今のところベストだと思います。やさしくて、切なくて、そして「少し・不思議」で。私はこの作品がとても好きです。
それ以外に特にいうことがないくらい私はこの作品に満足していますが、蛇足的に書くと。とても「巧い」作家だと思います。
前2作でも見られたような仕掛けと驚きが、本作にも見えます。ただ、これまでと違うのは、その仕掛けが生む驚き以上の感動です。
加えて、「ドラえもん」、藤子・F・不二雄先生への敬意と愛。物語の構成、ところどころで挟まれる印象的な道具、「SFごっこ」。同じ時代に生き、藤子作品に触れて育った私自身が、強く共感し、物語に入り込める要素の1つとなっているのは、間違いなくこのポイントだと思います。その混ぜ込み方が、抜群に巧い。
瀬名秀明さんによる文庫版解説もとてもイイです。
私にとっては、折に触れて読み返す、そんな作品になるかもしれません。辻村作品は、これからも欠かさず読んでいくつもりです。(まあ文庫化待ちですけどね…;)