「大誘拐」

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

夏休み課題図書その1です(嘘)。
何で今さら読んだかというと、手元に読む本がなくなって、相方が読んだきり、数年間積読になっていた本作をようやく手に取りました。…実は本作、私の勝手な勘違いで読むのが遅れていたりして。20世紀の大名作、天藤真大誘拐」の存在というのは、もちろんずっと前から知っていたのです。しかも家にあったのです。なのに、勘違いで手に取らなかったのです。あーーー、もっと早く読めばよかった! も、むっちゃくちゃおもしろかったです。私が生まれた年に発表された作品なのに、古さもないし。もちろん、時代が違うので現在では考えられないようなシチュエーションも多いのですが、それゆえの策が張り巡らされていて、そこがまた最高にイイのです。
いやもう、本当にとにかくおもしろい。ミステリーというだけでなく、エンターテインメント作品として、本当に大傑作だと思います。(ミステリーはあくまでエンターテインメントの中の1ジャンルだという認識です。)

一番の魅力は、キャラクターの素晴らしさ。とし子刀自のなんて素敵なこと! もちろん「虹の童子」3人組も、とても良いのだけれど。悪人がいないことの心地よさ。ここに「物語」ならではの世界が見れて、それがまた心地よい。
しかも、身代金百億円(しかもあの当時で!!)の誘拐なんていう奇想天外さ! なのに、なんだかちょっとリアリティが感じられるあたりが、本当にすごい。
秀逸なキャラクターによって、しっかりしたプロットが生き、荒唐無稽ともいえそうなストーリーが破綻を来すことなく説得力を増していく。これはやはり、物語の作り自体がしっかりしているからなのでしょうね。

…ちなみに勘違いというのは、映画のネタバレを知ってしまっていて、本作の「真相」を知っているからおもしろくないだろう…と思っていたのですが、そもそもその映画というのが本作とは別物だったというオチでした。ちゃんちゃん。そもそも「そういう話」じゃなかったし。いやー、読んでよかった。ホント、よかった。夏休み課題図書に最適ですわ、これ。いや、読んでる間は別に夏休みじゃなかったんですけどね、私^^;;