「犬はどこだ」

犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこだ (創元推理文庫)

派手さは一切ないものの、発想も良いしストーリー展開や淡々とした描写力、何よりもしっかりとした構成力が好きで、何気にお気に入りの米澤作品。本作が文庫化されているのを発見したので(例によって多少遅い)、手に取ってみました。
で、結論。やっぱり私、この人の作品が好きです。特に本作は、今まで読んだ氏の作品の中で一番好きかも。
それはもしかしたら、主人公の設定にあるのかもしれません。これまでは「青春日常ミステリー」とでも言うべき高校生を主人公とした作品にばかり触れてきましたが、今回は社会人…をドロップアウトした? 探偵が主人公。何となく、心情に共感するところもありつつ、興味深く読みました。扱われている題材としても、なんとも非常にわかるというか。一見ミスマッチかもしれない複数のテーマがそれぞれおもしろく、これも興味を惹かれたり。
しかし圧巻は、やはり構成とラストに近づくにつれての展開。…後味が良いかどうかは別として、でも私は一筋縄ではいかないこういう感じ、嫌いではありません。本当はもっとゾクリとしてしかるべきなのかもしれないエンディングについても、むしろタイトルへの繋がりと飄々とした語り口から、ついついニヤリとしてしまうような。
いずれにせよ、この人の作品、私自身が思っていた以上にお気に入りなことに気付かせていただきました。今後はもしかしたら、優先して「買い」な作家さんになるかもしれません。