「生ける屍の死」

私は未読だったりします(汗)。

生ける屍の死 (創元推理文庫)

生ける屍の死 (創元推理文庫)

いつかは読まなくちゃいけないだろうと思っていた作品だが、「奇遇」の評価が非常に高いのを見て、練習のつもりで読んだ。どんな傑作であっても長い作品というのはそれなりの準備と気合と慣れが無いと、集中して楽しむことができない。その昔「占星術」の洗礼を受けた頃、「斜め屋敷」に驚愕し、「異邦の騎士」で感動した俺は、続いて読み始めた「暗闇坂」で久しぶりに本を投げ出した。長くて最後まで読めなかったのだ。当時既に「アトポス」と「眩暈」を購入済みだったのだが、この二冊は未だに未読である。結局途中のエピソードを丸々読み飛ばすことで、一応読了したのだが、残っているのはラストシーンの怖さだけであり、特に読み飛ばした巨人伝説の件は全く記憶に残っていない。
そんなわけで、この「生ける屍の死」も、「奇遇」を集中して楽しむ為のリハビリという位置付けで読み始めた。以前、「13番目の探偵士」で彼の物語の構成が島荘のそれに近いものに感じられたため、やはり長大な物語である本作にも非常に不安があったのだが。
実際読んでみると覚悟していたためか、思ったよりスムーズに読み進めることができた。最後まで読むことで、途中に挿入されている土地や家柄、宗教観といった説明文が解決編に必要な材料であることも分かったし、実際そこまで深く話を掘り下げることで、このテーマとルールが持つ奥深さを存分に堪能できたと思う。解決編の畳み掛けは見事であるし、全編を通じてさりげなくちりばめられている、本格読者心をくすぐるような設定と記述にはニヤリとさせられた。確かに傑作だと思う。
ただ、これは人には薦められないな。予想できたことだが、素人には読ませられないし、面白く無いだろうと思う。これはマニアによるファンの為の本格だと感じた。(姫)