「秋の花」

秋の花 (創元推理文庫)

秋の花 (創元推理文庫)

「円紫さんと私」シリーズ3作目は、初の長編。そして、初の人の死に直面するミステリー。ですが、ミステリーとしてではなく、1つの作品として、私はこのシリーズが好きです。
静かなだけに、切なさがこみ上げてくる氏の文章。さりげなくもこの上なく美しい描写の数々。興奮を伴うことはありませんが、ただ静かに、気付くとその作品世界に入り込んでしまいます。入り込んでしまうがゆえに、ラストでは涙がこぼれてしまいました…。せつなく、ある種残酷な結末ではありますが、決して読後感は悪くありません。その辺りも氏のテクニックなのかなあ…などと思ったり。
余談ですが、本作で若くして死を迎えた真理子さんは、「スキップ」で時間を飛び越えた女子高生・真理子さんなのですね…。そのことを知り、思わず胸がきゅんとなってしまいました。