「破線のマリス」

破線のマリス (講談社文庫)

破線のマリス (講談社文庫)

読んだばかりの福井晴敏「川の深さは」を破っての江戸川乱歩賞受賞作ということで、手に取った本作。
「川の深さは」も非常に良くできた作品だったので、こちらは一体どれだけのものなんだろう…という超えらそうな視点で読んだ感想としては、…確かに面白かったです。
もともと脚本家としてデビューした作者ということで、テレビ業界について非常にリアルかつ詳細に描写がしてあり、興味深く読みました。非常にドラマ性の高いストーリーは、文章力もあってまさにその映像が浮かんでくるかのようで、読み手の心を掴むに充分でした。この作品の評価が高いのも頷けます。
…なのですが。
何が問題かというと、やはり本作が「ミステリーとしてどうか」ということであって…。
あくまで「江戸川乱歩賞」ということで、本作はミステリー作品だと思っていたのですが、これだとちょっと…どうなのよ? と言いたくなってしまいます。結局解決されないままの謎が放置されてちょっと納得がいかない部分が残っているというのは、すっきりしなかったり。
もちろん、ストーリー展開などに対して「さすが!」と思うだけに、そこもしっかりしていたら言うことないというだけで、そう大きな不満を持っているわけでもないのですが。
終わり方なども個人的にはかなり評価しています。映画版の評価も高いようなので、機会があればぜひ見てみたいところです。