「シャドウ」

感想書くのが遅れましたのことよ。

シャドウ (創元推理文庫)

シャドウ (創元推理文庫)

私にとって、道尾秀介という作家はビミョーな位置付けにあります。以前も書きましたが、私の中の評価としては、桜庭一樹氏と似ていつつ、でも対極にある。どういう点かというと、ものすごく期待値は高く、文庫化されたら基本的に端から読む(あ、桜庭作品はそうではないな)けれど、現状100%の満足はできない。
たとえば道尾作品の場合、選ばれるテーマ。私はホラーは苦手だし、暗い話も正直好きではない。文章も、あまり好みじゃなかったり。そんなこんなで、道尾作品は読んでいて、100%入り込むことはできない。自分の好みと少々違う部分やわざとらしい部分がちょっと目に付く部分があるから。…だけれど、終盤にかけての展開に、いつもハッとさせられる。
ちなみにそれに対して桜庭作品は、入りがものすごくうまい。それだけで読んだ価値があると断言できるほど、うまい。いちいちツボをつかれたりする。気になってぐいぐいと先へと引っ張られて読み進めていく。すると、あれ? …終盤の失速。んー、イマイチ好みじゃないなあこういうの、と思う。そんな感じで、100%入り込めなくて評価できないけれど、魅力はすごくよくわかって、いつか化けた作品を読めるのではと期待して、読み続けているのが、この2人の作品なのです。(や、文庫落ちを待たなければ、もうとっくにそういう作品に出会えていそうですけれどね^^;)

さて、そんな「シャドウ」。過去読んだいずれの道尾氏の作品と比べても、グッと一般向けになったような印象があります。「小説」として、非常に手に取りやすい感じというか、受け入れられやすいというか。さくさくと読みやすい。陰鬱な気持ちになったりするけれど、救いもある。
とはいえ、仕掛けはガチガチのミステリー。こういうのはもちろん好みです。いやらしくあからさまなミスリーディングに、コノヤロウと思いつつ臨んだのですが、やっぱりやられてるでやんの、私w 他人にも勧めやすい、とてもよい作品だと思いました。
本作で改めて、道尾氏が描く物語に、そして何より組み立てられる仕掛けに、私はかなり惹かれていることを実感しました。これからも氏の作品は読み続けます。さあ、どんどん来い文庫化!(笑)