「スクールアタック・シンドローム」

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)

なぜかすごく、キた。私の中で、キた。ひさびさに、キた。ああ、舞城王太郎に私が求めているのはこういうものなんだ、なんて錯覚してしまうほどに。
つい最近、「みんな元気。」で首を傾げたばかりだというのに(だって訳わかんない)、迷わず手に取った今作ではビックリするほどハマっちゃったりしちゃって。自分自身のこのふり幅は何なんだ。描かれている世界がそんなに違うとは思えないのに。まあ正直、今回の収録作だって訳わかんないといえば訳わかんないんだけど、でも真っ当に一本筋が通ってるって言うか。そういうところが真人間な私は惹かれるのだろうか。前作だってちゃんと筋は通ってるハズなのに、どうもそれが私とズレていたのかなあ。
ぐいぐい引きずられる文体は相変わらずで、描かれている世界も相変わらずで、でもって描写力は相変わらず圧倒的で、出てくるキャラクターも相変わらずハチャメチャで、だというのに、だからこそ、私は舞城作品を読むのをやめられないんだ、きっと。

で、表題作。何でこんなに気に入ったのか、今となってはよくわからない…かも。読み返すとまた違った印象を抱きそうな気がする。だけどただ、いいな、と思ったのだ。漠然と。読み終えたときに満足感があったのだ。何となく。

「我が家のトトロ」もかなり好きな作品。氏の作品の中では、ある意味異色とも言えるほどに「ほのぼの」感が漂っている気がする。レスカに会いたい。寓話だとわかっていても。レスカに会ってみたい。

ソマリア・サッチ・ア・スイートハート」は、今回の収録作の中では一番舞城っぽい、かな。文庫用に書き下ろしということで、最新作、なのかしら? 相変わらず描かれているのは結構キツイ世界なのに、でも読めてしまう。極限状態の愛っていうのは、どうしてこんなにまっすぐに届くのだろう。不思議だ。うかつにもちょっとじーんとしてしまいそうだったではないか。

本作に収められているのは、ただひたすらに愛につらぬかれた作品。舞城作品はいつもそうだけれど、でもいつも以上にその愛を感じた作品たち。だからこそ、私自身にとってもなぜだか愛しく感じられるのかもしれない。舞城氏の本を読み返そうというスタンスは基本的にないのだけれど、本作はもしかしたら、ふと再度手に取ることがあるかもしれない。そんな予感。