「イン・ザ・プール」

イン・ザ・プール (文春文庫)

イン・ザ・プール (文春文庫)

文庫化を機に、前々から読みたかった本作を入手。読もう読もうと思っている割に、奥田作品を読むのは2作目。がっくし。
で、本作。期待しすぎていたのか、思ったほどのハッとするおもしろさはなかったのですが、それでも充分に楽しませていただきました。
トンデモ精神科医の伊良部のキャラクターがやはり秀逸。好きになれないし生理的嫌悪感を覚えてしまうものの、でもやっぱり憎めない。こういう軽いノリで読める連作短編というのは、本当に重宝するのです。その際、主人公のキャラの造形というのは重要。本シリーズは今後も読んでいきたいと思います。
それぞれ描かれるエピソードも、それぞれの登場人物ほど深刻ではないものの、ふと思い当たるトコロがないでもない箇所をつついてくるので、かなり関心深く読みました。


イン・ザ・プール
伊良部の言う通り、健康的だしいいんじゃない? ということで(笑)。さりげない夫婦愛を感じていたら、ラストがイイですね。エロス。うそです。


「勃ちっ放し」
さすがにこれは私にはわかりませんが(笑)。かなりつらそうですねえ…。でもその病症のせいか、一番印象に残っている話なのは確か。


「コンパニオン」
美人って大変ですねえ…。まーったく。


「フレンズ」
これ、ホントにありそうな気が。軽いけれどリアリティに溢れている感じ。ラストシーンのマユミさんが好きです。というかこの作品のなかで何気にお気に入りなマユミさん。


「いてもたっても」
ちょっと共感する部分があった主人公。私もたまに家の鍵をかけたかどうか心配で思わず引き返すことがあるもので…。ま、ここまで過敏にはならないものの、誰しも思い当たる節があるのでは。


こうして5編を振り返ると、伊良部は別に大したことをしていないように見えて、やはり名医なのか…と思わなくもなかったり。いや、やっぱり迷医だろうな。
個人的には松尾スズキ氏が伊良部を演じたという映画版も見てみたいところです。