「3000年の密室」

私の中ですごいベテラン作家というイメージがあったのですが、意外や意外まだそんなに経っていないんですね。なんなんだろうこの偏見(笑)。

3000年の密室 (光文社文庫)

3000年の密室 (光文社文庫)

私にとって初の柄刀作品。でもこれがデビュー作なんですよね。びっくり。そしてこの題材がこの人の専門でもないということにまたびっくり。
最初は読みづらいかな、と思っていたのですが、いざはまるとするする読めました。(その割に読むのに時間がかかったのは…何故でしょう?)
この作品は、まずそのタイトルになっている「3000年の密室」という発想そのものが素晴らしい。
密室状態の洞窟の中で発見された3000年前のミイラの謎、その発見者である人物失踪の謎。
そして最後にもう一つ生み出される「3000年の密室」…。
過去と現在、ふたつの事件とそれにまつわる考古学的な話だけでなく、主人公の人物像や背負う過去までも描き出した、非常に欲張りな作品であるとも思いますが、でも全てがきちんと描ききれている作品ではないでしょうか。これはこのぺージ数でも仕方ないかと。
終わり方も非常に美しい、まさに傑作と呼べる作品だと思います。