「恋霊館事件」

恋霊館事件 (光文社文庫)

恋霊館事件 (光文社文庫)

「未明の悪夢」と同じ主人公コンビが登場する連作短編集。もちろん舞台は震災後の神戸。
そういう意味で確かに重いテーマが扱われているし胸にどしりとのしかかってくるものも感じるけれど、それを差し引いても本格ミステリーとして充分に面白い作品だと思います。
個人的には前作は「震災小説」としての評価が中心になってしまいましたが、本作はミステリーとして非常に高く評価しています。
あの震災が人々の生活に…人生に、どれだけ大きな影響を与えたのか…。それを痛いほどに感じさせられる物語の数々。震災そのものを描いているわけではないだけに、余計胸に響いてくるものがあるのです。
相変わらず震災を実際に体験した人には薦めづらい作品ではありますが、あの事実を忘れかけているような方にこそ、読んでもらいたいと思います。
単純にミステリーとして読んでも充分面白い作品ですので。悪しからず。