「空飛ぶ馬」

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

最近めっきり、いまさら〜な作品ばかりを読んでいるような。本当は「夜の蝉」を先に結構前に入手済だったのですが、シリーズ2作目だとわかっていたため、1作目の本作を読みたかったので保留にしていました。
奇しくも、本作は北村氏のデビュー作。当時は覆面作家だった北村氏。こんな作品を読んでしまったら、まさか北村薫が中年のオッサン(失礼)だとは思いませんわ…。
# しかも、まさかラーメンズ・片桐氏の恩師だとは…。←関係ない。
この人の作品は、文章がやさしく表現が温かみに満ちていて大好きです。本作も非常に見事な文章力に舌を巻きました。この人の描写力や文章構成は本当に素晴らしいと思います。
主人公は女子大生、19歳の「私」。出会うのは殺人といったショッキングな事件ではなく、あくまで「日常の謎」。その謎を解き明かす探偵役は噺家の円紫師匠。この2人の織り成す会話や空気が、やわらかく穏やかで非常に心地よく、ついつい引き込まれてしまいます。
5つの短編から成る連作のなかで、個人的に特にお気に入りは「赤頭巾」。この短編の終わり方にはどきり、ぞくり…。そしてその後に表題作「空飛ぶ馬」を持ってくるあたり、うまいなあ…という感じだったり。この表題作は、心温まる、とても素敵な物語です。
対照的なこの2つの物語だけでなく、その他3作品もしっかり本格ミステリーでおもしろかったです。
さて、続いて「夜の蝉」を読む予定です。そして、何だか落語を聞きに行きたいな〜と思ってしまいました。