「容疑者Xの献身」

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

いうまでもなく、読みたくてたまらなかった作品。過剰なのではないかと思えるほどの期待をして読んだ本作でしたが、とんでもない! その期待を上回るほどの傑作でした。
今年読んだ中では、間違いなくベストミステリー。個人的には、東野作品のベストといってもいいのではないかとさえ思います。間違いなく、5本の指には入る、氏の代表作だと思います。

多くは語れませんが、感想は以下に。

運命の数式。
命がけの純愛が生んだ犯罪。

本書の帯に記された言葉。まさしくこれは、「最高のミステリー」であると同時に、「最高の純愛小説」であると思います。
天才数学者である石神が生み出した数式は、この上なく美しく、そしてとても切ないもの。これを純愛といわずして、何と表現すればいいのでしょう…。命がけで人を愛すること、言葉でいうのは簡単ですが、それを本当にできる人がこの世界に実際にいるのでしょうか…。その美しさ、そしてそれゆえの切なさに、胸をうたれました。
しかし、単なる純愛小説ではないのが東野氏のすごいところ。ミステリーとしてもものすごいものであるといわざるを得ません。石神を好敵手として友人として認めている、天才物理学者・湯川によって明らかにされる真相には、ただただ驚かされました。この期に及んで、まだこんなにすごいミステリーを生み出すことができるなんて、東野圭吾という作家は本当に恐ろしいです…。ただただ圧巻。
衝撃的な真相を迎えてのラストシーンでは、思わず涙を流してしまいました。おそらく石神を思ってでも靖子を思ってでもなく、湯川を思って…。本作で彼が見せた苦悩は、容易に想像できるものではありませんが、そしてそれはまた草薙にもいえることなのかもしれません。
シリーズ2作品を読んでいなくても充分におもしろい作品だとは思いますが、私は過去2作品を読んでから本書を読まれることをオススメします。草薙を、そして湯川を知っているからこそ、ここまで物語に没頭できたことは間違いありません。