「悪党たちは千里を走る」

悪党たちは千里を走る

悪党たちは千里を走る

いや〜、コレ相当おもしろかったです。
私的には、貫井作品の裏ベスト作品と言えるかも。この手の作品が「裏」って、どうなんだろうという気もしますが(笑)。
氏の作品にはめずらしく肩の力を抜いて読める作品ということで、気軽に色んな人に薦めることができます。とはいえ、この作品から貫井作品に入った場合は、私的に氏の「表」であるダーク系作品にびっくりするのでしょうか…?

貫井氏のユーモアセンスが溢れる本作。
何よりまず、キャラクターが秀逸。主人公である詐欺師の高杉とその舎弟(?)園部のコンビに、明らかに怪しい美人美術商(というとちょっと違うか)三枝を加えた3人はもちろんのこと、ストーリーの中心にいる金持ちの息子・巧が非常にいい味を出しています。巧くんみたいな生意気でアタマがいい、ちょっとイヤミな子、(こうして小説で読む分には)大好きです。
二転三転する序盤〜中盤はもちろんのこと、その後一変する展開、ぐいぐいと読み手を引っ張っていく筆力は、相変わらず「さすが」の一言です。
読後感も非常によく、個人的にはとても満足いたしました。たまにはこういう、ユーモア溢れる軽い作品というのも、読みやすくて嬉しいです。
水準が非常に高く、迷うことなく安心して「買える」作家さんなので、おそらく今後もずっと氏の作品は読んでいくことでしょう。それが今回のようなコメディタッチのものでも、ダーク系のものであっても。これからも期待しています。