「怪笑小説」
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1998/08/20
- メディア: 文庫
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このシリーズは「毒笑小説」「黒笑小説」の両作品を既読。
なので、この人のこういう小説のレベルが非常に高いことを、こちらも承知しております。ということで、例によって軽く楽しくすらすらと読ませていただきました。
「鬱積電車」
非常にリアルな作品。ホント、通勤電車なんてこんなんだと思います。短編ならではのこのオチも好きです。想像しただけで、ニヤニヤ。
「おっかけバアさん」
これもある意味リアルだなあと思っています。自分の老後なんてわかりませんが、今後自分がこうならないとは限らない。というか、大いにこうなる可能性がある気がするもので(笑)。
「一徹おやじ」
「巨人の星」世代ではない私ですが、でもこの話は結構お気に入りだったり。最後の一文は、やっぱりちょっとブラックだなあ。
「逆転同窓会」
これもこれでリアルだなあ。この話についての作者本人によるあとがきの解説も、氏の考え方が伺えて非常に興味深かったです。
「超たぬき理論」
この短編集のなかでも、やはりこの作品の存在感はすごいです。言ってしまえば、それだけバカだということなのですが、非常にお気に入りです。
「無人島大相撲中継」
これもバカといえばバカなんですが、ブラックですねえ。
「しかばね台分譲住宅」
これまた実はかなり印象に残っている作品。こわっ。でも笑っちゃうなあ。描写などが軽いのでリアリティがないように感じさせられるくせに、実際そういう事件が起きてもぜんぜんおかしくない気もしちゃったり。
「あるジーサンに線香を」
切ない系の物語。あとがきで書かれている通り、確かにこれでシリアス長編一本書けちゃうだろうなあと思います。これをこういう風にまとめてしまえるあたりに、東野圭吾のすごさがあるわけで。
「動物家族」
これも非常に象徴的な作品。こういうの、ホントうまいですね。これもお気に入りの作品です。
で、個人的にもっとも興味深く読んだのが「あとがき」かもしれません。東野圭吾氏本人による、こういう系統の全作品についての解説というのは、とても新鮮でした。
こうして作品を読み終えてから思うのは、東野圭吾というのは本当にすごい作家なんだなあ…ということ。高い水準を保ちながら、こんなに幅広い作品を書ける作家というのは、おそらく他にはほとんどいないと思います。シリアスな作品も、こういう軽い作品も、どちらも私は大好きです。ただ、こういう軽いノリでしっかり楽しませてくれる作家さんってそんなにいない気がするので、今後もこっそりこのシリーズを待っていたいと思います(笑)。