「遠まわりする雛」

遠まわりする雛 (角川文庫)

遠まわりする雛 (角川文庫)

古典部シリーズ第4弾。以前も言いましたが、私は小市民シリーズよりこちらが好きだったりします。今回は7篇もの短編が収められているということで、どうなんだろう? と少し構えていたのですが、いやいやいやいやおもしろかったです。やっぱり好きだなあ。

やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければいけないことなら手短に。

そんな主人公・折木奉太郎が、小さな謎が「気になる」千反田えるの好奇心に振り回されながら、どこか変化し、成長してゆく。現実離れをしていそうで、実はとてもリアルだったりする彼らの物語。…まあ私は彼ら2人より、ふくちゃんと摩耶花のカップル(?)が気になったりしていますが、でもこのシリーズでこんなに恋愛濃度がそれとなく濃くなるとは思わなかったなあ。今後このシリーズ、どうなるんだろう…。

色恋沙汰も含めて考えると、「手作りチョコレート事件」は、どうしてもちとニヤニヤしてしまったり。微妙な関係性、でもなんだかわかる気がする。やっぱこの登場人物たち、めんどくせーなーw
とことん安楽椅子探偵な「心当たりのある者は」も印象的。推理の取っ掛かりからしてすごく古典部っぽいし、さらにそこからの広がりも見事。いやー、これぞ、ってな感じ。
あとは「あきましておめでとう」と「遠まわりする雛」もよかったなと。短い作品がぽんぽんと並んだ後、後半のこのあたりの作品がとてもよかったです。うん、好きだなあ。今後も読みたいなあ。

…なんかろくでもない感想ですが、やっぱこの人の書く文章やセンスが、とても好きだなあと感じたのですよ。こういうあたり↓とかも含めて、ね。

「振袖?」
「いえ、コモンです。(中略)」
 コモン? コモンセンスのコモンか。一般用、という意味だろうか。着物の世界にも英語は押し寄せているのか。